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【パラぷよ7】4.りんごと物理部

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「へぇ、じゃありんごちゃんは、その『物理部』っていう部活に入ってるんだ?」

「うん! …皆は『難しい』とか『よく分からない』っていうけど、でも本当は、とても面白い学問なんだよ?」

やっと迎えた放課後。

お昼休みの事件(?)をきっかけにアルル、アミティと色々な話をした。

あまりにも他愛のない内容だったから細かい事は覚えてないけど、巡り巡って部活の話になり、二人を物理部まで案内する事になった。

「…幽霊部員が多くて、真面目に通っているのは私とまぐろ君とりす先輩しかいないんだけどね」

しかも今日、りす先輩は休みである。

「でも、せっかくだから見て行ってね!」

『うん!』

二人は笑って頷いた。


物理部のドアをあけると、既に来ていたまぐろ君がけん玉で遊んでいた。

「やぁ、りんごちゃんやっと来たね!」

「お待たせ、まぐろ君!!」

「あれ? アルルとアミティも来たんだ? …新入部員?」

「残念だけど違うよ。二人はただ、見学に来ただけ」

「こんにちはー!」

「とりあえず、見学に来ました!」

元気よく挨拶するアミティとアルル。

「ふ~ん、そっか。まぁ、分からない事があればりんごちゃんに聞くと良いよ。なんと言っても、りんごちゃんは、学年で成績トップの実力者だからね!」

まぐろ君はいつも通りけん玉で遊びながら陽気に言った。

「へぇ、そうなんだ? りんごって頭良いんだね!!」

関心したように言うアルル。

「…別に、そういうワケじゃないんだ。私はただ、知識を身に付ける事が楽しいだけ」

「…そんな風に言えるなんて、『学生の鑑』だねぇ!!」

相変わらずけん玉で遊びながらのんきな声を出すまぐろくん。

「ボクはやっぱり勉強するより、こうして体を動かしている方が好きだな。…だいたいテストって面倒くさいし、キライだし!」

「私もテストは嫌いだよ。点数をつけて順列をつけて…。それはとても『面白くない』事だと思う。でも、『何かを学ぶ』事自体は純粋に面白い事だと思うんだ。

『何も知らない』よりは『何かを知っている』方が、考え方だって広まるし」

まぐろ君は口元をニマリと歪めて言った。

「…そういう考えが、ボクには分かんないんだよね~?」

「…ま、まぁいいわ。考え方は人それぞれなんだし。

そんな事より、せっかくアルルとアミティが見学に来てくれたんだもん。物理部っぽいとこ見せなきゃ!」

「じゃありんごちゃん、解説よろしく!!」

まぐろ君はけん玉で遊ぶ手を緩めぬまま言った。

や、やっぱり私がやるのね…。

(まぁ、物理学について堂々と語るまぐろ君なんて想像できないから良いけど…)

「コホン」と私はわざとらしく咳払い一つ。

「見学に来てくれた奇特なお二人の為に、物理学の魅力をこの私、あんどうりんごがレクチャーしよう!」

「イエーイ!!」

「よ、待ってましたー!!」

アミティもアルルもノッてくれたけど…

何を話せば良いんだろう?

相手はたった二人だけど、人前で何かを発表するってやっぱり緊張するなぁ。

…よし。

やっぱり身近で分かりやすいネタがいいよね。

「アルルやアミティは、何故物が古くなるか、何故生物が老いていくか分かる?」

「…『何故』ってそれは…」

「時間が経つからじゃないの?」

「だから、何故時間が経つとそうなるのかって事だよ。

そういう、普段は『当たり前』だと考えている事を突き詰めて考えていくのが物理学の――ううん、『科学』って学問の醍醐味なんだ」

「…言われてみれば…」

「どうしてなんだろうねぇ…?」

顔を見合わせるアミティとアルル。

「じゃあもう一つ、ヒント兼質問だよ。部屋を使ってるといつの間にか散らかってしまうのはナーゼだっ!?」

「部屋が散らかる理由って…」

「やっぱり『片付けないから』とか?」

苦笑を浮かべるアミティとアルル。

「…えーと、そろそろタイムアップって事で解説しても良いかな?」

『お願いします!!』

二人の呼吸はピッタリだった。

「コホン」と私はまたわざとらしく咳払い一つ。

「私達の住むこの世界――この宇宙には、『エントロピー増大の法則』っていう法則が存在しているからなんだ」

「…エントロピー」

「増大の法則??」

「うん。そう」

二人はまたまたひそひそ話を初めた。

「…一体何の事かな、アルル?」

「…そういえば、アコール先生が言ってたね。地球には『科学』っていう、ボク達がいた世界の『魔導体系』とは似て非なる法則が存在しているって」

「…じゃあ今りんごちゃんが解説してるのは、その『科学』って法則に関する事なの?」

「…うん、たぶんね」

「…あの、そろそろ解説を続けても良いかな?」

「あ、うん、ごめんね、りんご! 続けて!!」

私は深呼吸一つした。

「エントロピーっていうのは、『乱雑さ』を現す尺度の事なんだ」

「乱雑さを…」

「現す尺度!?」

交互に呟くアルルとアミティ。

「そう。つまり『エントロピー増大の法則』っていうのは、『乱雑さが増していく法則』って事だよ。

部屋の例で考えれば、『綺麗に整理整頓された状態』から『散らかった状態』に変わっていく法則って事だね」

「…つまりボクの部屋が散らかっているのは…」

まぐろ君がけん玉で遊ぶ手を珍しく緩めて言った。

「『片付けない限り部屋は散らかる一方』って、元々そういう法則が存在しているんだから『仕方のない事だ』って事だよね?」

「…だから、ちゃんと片付けなさいってば…。

私達生命が意思を持っているのは『エントロピー増大の法則に抗う為だ』って、りす先輩も言ってたでしょ?」

「…りす先輩?」

疑問の声をあげたのはアルルだった。

「そう。りす先輩っていうのはこの部の先輩でね。

元化学部らしぃんだけど…でも物理学についてもとっても詳しいんだよ?

りす先輩の物理学トークを聞いて、私、ソッコーでこの部に入る事を決めたんだから!」

「凄い人なんだね!」

とアルルは優しく笑った。

「うん! …でもちょっと変わってるのが玉にキズなんだけどね」

私は「にゃははははー」と苦笑いし、

「…実は今二人に話した事は全部、りす先輩の『受け売り』なんだ」

「そうなんだ? で、その『りす先輩』は今どこに?」

とアミティ。

「りす先輩は今日はいないよ。用事があるらしくてお休みなんだって。

さっきスマホにメールが入ったんだ」

「そっか、今日は会えないんだね。残念だな。…でも、『すまほ』って何?」

「えっ!?」

今時スマホを知らない⁇

「アミティ!!」

アルルが血相変えてアミティの口をふさいだ。

「駄目だよ、やたらと質問したら! この世界の人達にとっては当たり前の事かもしれないんだよ?

『当たり前』の事を質問したら、怪しまれちゃうよ!」

「もっがもっが、もったって!(そんな事言ったって!!)」

…二人はたぶん、小声で会話しているつもりなんだろうけど、悲しいかな、もろ聞こえである。

(だって目の前にいるんだし…)

でもこういう場合は、気づかぬフリをしてあげるのが優しさだよね…?

「と、ところでさぁ!」

アルルが気を取り直したように言った。

勿論、その手はまだアミティの口をふさいだままだ。

「『エントロピー増大の法則』…だっけ?

部屋が散らかるのはなんとなく分かるけど、その法則とボク達生命と、どんな関係があるの?」

「もがもがって、もががん、もがががん!(アルルだって、質問してるじゃん!)」

「あ、しまった!!」

「…大丈夫だよ。普通の人は多分、『エントロピー増大の法則』なんて知らないから」

「え、そうなの?」

「うん…たぶんね」

それにしても、この二人はさっきから何を隠そうとしているんだろう?

…ま、いいか。

「ええっと、さっきも言ったけど、エントロピーとは『乱雑さ』を表す尺度の事なんだ。

で、どんな部屋もエントロピー増大の法則に従って、片付けない限りどんどん散らかって――物理学的に言えば、乱雑になっていってしまう。

もし部屋を片付けたとしても、部屋を構成している建物自体もエントロピー増大の法則に従い、やがては朽ちてしまう。

そうなったらその部屋は、もう使い物にならないでしょ?」

アルルは苦笑した。

「…部屋を構成している建物自体が潰れちゃったら、そりゃ確かにどうしようもないねぇ」

「それと同じ事が、私達生命にも起こるんだ。エントロピー増大の法則は、部屋や建物といった無生物にだけ襲いかかるわけじゃない。

私達生命も、打ち勝つ事ができない法則なの…」

「へぇ、その『エントロピー』ってヤツ、強いんだ?」

やっと口を解放されたアミティが嬉々として言った。

「私達生命は『乱雑』さとは真逆にある存在――つまり『秩序』なんだ。

でも、アミティの言った通り『エントロピー増大の法則』はとても強い法則。

『秩序』たる私達生命もそれには逆らえず、少しずつ『乱雑さ』が増していって――エントロピーが最大に達した部屋というか建物が使い物にならないのと同じように、私達生命もエントロピーが最大に達した時――」

私は一瞬、言うべきかどうか迷ったが、ここまで来た以上は言うしかない。

「――死んじゃうんだ…」

教室に、沈黙が訪れた。

心なしか、暗い空気が流れているような…。

でも、考えてみればそりゃそうか。

「死に向かって行く法則」の話なんかされたところで、明るい気分になる人なんかいるはずない。

物理学の面白さを伝えるつもりが、逆効果だったかも…。

「で、でも悲観する必要は全くないんだよ? 『エントロピー増大の法則』はとても強い法則だけど…でも私達だって、ずっと『負けっぱなし』ってわけじゃない。

私達生命は、みんな『生きよう』とする意思を持っている。

部屋が散らかっていれば片付ける事ができる。

身体は老化に向かっていくけど、それを遅らせようと努力する事ができる。

私達生命は『意思』の力で、無生物よりもずっと長く『秩序』を保つ事ができるの…!」

どうしよう?

フォローを入れたつもりなんだけど、うまく伝わったかな…?

「ふ~ん。なるほどねぇ」

頷いたのはアルルだった。

「…アルル、分かったの? 今の話?」

アミティが驚いたように聞いた。

「うーん、分かるような分からないような…?

でもまぁ、その『エントロピー増大』ってのがつまり生物にとって『老化現象』で、いつかはそれが最大に達して死んでしまう。

だけど、ボク達生命は意思――つまり『心』の力で、老化現象を、ひいては『死を遠ざけている』って事なんじゃないの?」

「すごーい!」

私は思わず感動の声をあげた。

「すごい、アルル、その通りだよ!!

…ただ、事故とかで致命傷を負った場合でもエントロピーは最大になってしまうから、必ずしも『老化現象』を指すわけではないんだけどね。

でも私が言いたかったのは、まさにそれ!」

「えっへん!」

「アルル、すごーい!!」

胸を張るアルルに称賛の声をあげるアミティ。

「よく分かったね、今の話。…あたしには、なんの事だかサッパリだよ」

アルルは「チッチ」と指を振り、

「言っとくけど、ボクだって元々エリートなんだよ?」

「えー、そうなんだ? でもアルルって、プリンプタウンのテストでは0点とってなかったっけ?」

「あ、あ、ああの時はちょっと調子が悪かったんだよ!!」

「ホントかな~!?」

「ホントだよっ!!」

イタズラっぽい笑みを浮かべるアミティに、恥ずかしそうに顔を朱にそめて反論するアルル。

…なんかよく分かんないけど、その「プリンプタウン」ってのが元々二人のいた町なのかな?

聞いた事のないけど、どこの国の町なんだろ?

「ねぇ、りんごちゃん」

アミティがアルルをからかう事を止め、私へと向き直る。

「あたしにはそのエン…なんとかの法則はよく分からないんだけど、そもそもなんでそんな法則が存在するの?

だんだん乱雑になってくって話だったけど…別にそうならなくても良いんじゃない?」

「残念だけど、そういうわけにもいかないんだよ」

「どうして?」

「私達生物、あるいは無生物にとっては、『秩序ある状態』より『秩序がない乱雑な状態』の方が、圧倒的に多いの」

「へ?」

「…例えば絵や字を描く時だって、丁寧に書くより雑に書く方が簡単でしょ?

私達の身の周りにあるモノは、私達自身も含めて『気を抜けばどんどん雑な方に流れてしまう』

残念だけど、元々そうできてしまっているの…」

もっとも竜巻や結晶といった例外もあるらしいけれど。

(それらは自動的に秩序が生まれた結果形成されたモノだが、最終的には『エントロピー増大の法則』の圧力に負け、崩壊する)

「…う~ん」

「どうアミティ? 納得した?」

「…やっぱり良く分かんない」

アルルの問いに、首をかしげるアミティ。

私は思わず苦笑した。

「そ、そうだよね…いきなりこんな事言われても…やっぱりワケ分かんないよね…」

「…ごめんね、りんごちゃん」

「ううん。いいの。…割りとみんな、そういう反応だから」

ただでさえ「理系離れ」が叫ばれているご時世だし…。

「…でも最後に一つだけ、二人に質問して良い?」

『なあに?』

ハモりで反応するアルルとアミティ。

「私達が普段感じている時間経過は、過去、現在、未来という流れだよね。

でも逆に、未来、現在、過去という流れは有り得ると思う?」

「時間の逆転かぁ…」

「もしあったら面白そうだけど…でもそんな事って、本当にあるのかな?」

考え込むアルルとアミティに、私は言った。

「それが、『ある』んだって」

「ええっ?!」

「じゃあ地球では、しょっちゅう時間が逆に進んでるって事!?」

驚き過ぎるアミティに、思わず吹き出しそうになった。

「勿論そういうわけじゃないよ。ただね、物理学では『量子論』っていう、目には見えない小さな素粒子を扱う分野があるんだけど…

その素粒子の中に、時間を逆に進んでいるものが、観測されたんだって」

「観測って…目には見えないモノをどうやって観測したの?」

アルルの問いに、しかし私は首を横に振った。

「…ごめんね。それは私も知らないんだ。

でも、しょっちゅう観測されているらしいよ?」

「ふ~ん。なんだかややこしいね?」

「そうだね。でも私は今までずっと、時間というのは過去から未来へ、一方的に流れていくものだとばかり思っていたの。

目には見えない小さな世界の話とは言え、未来から過去へ向かっているモノが存在するなんて、想像した事もなかった。

『この世界には、私の知らない真実がまだまだたくさんあるのかもしれない』――そう思うと、なんだか無性にワクワクしちゃって」

「それで、この部活に入ったんだね!」

「うん!」

アミティの問いに、私はうなずいた。

「よし決めた! あたしこの部に入ろうっと!!」

「ホント!? ホントに入ってくれるの?」

嬉しさのあまり声が上ずる。

「うん!!」

にっこり笑ってガッツポーズをとるアミティ。

私は彼女の手をとった。

「あ、ありがとう!!」

「…でもアミティ、りんごの話全然分からなかったんじゃないの?」

「まぁそうなんだけど…でも、りんごちゃんが『面白い』っていうんだから、きっと面白い部活なんだよ!」

「…でもさ…」

と何か言いたげなアルルに、アミティは怯まず答えた。

「今は分からなくても、分かるようになるまで考えれば良いんだよ!

それに物理学の事だけじゃなくて、りんごちゃんの事も色々知りたいし!!」

「なるほどぉ。それもそうだね! じゃあボクも、この部に入っちゃおっと!!」

あっさり頷いちゃうアルル。

「う、嬉しいけどでも…そんなに簡単に決めちゃって良いの?」

もし途中でイヤになって辞めたりしたら、「内申」に響くぞ…。

「うん!」

アルルは先と変わらぬ様子で頷く。

「ボクもその物理学――だっけ? それについて学んでみたいと思ったし、何よりりんごについて色々知りたいからね!

アミティがここで良いなら、ボクもここで良いよ!

むしろ、ここが良い!!」

「あ、ありがとう。アミティ、アルル!!」

私は心の底からそう言った。

「お礼なんて良いよ。あたし達が物理部に入りたいだけだから」

「やったね、りんごちゃん。明日から、にぎやかな部活になりそうだね~」

「うん!」

まぐろ君の言葉に素直に頷く。

…すたれていく一方だと思われたこの部に、まさか二人も新入部員ができるとは!

やった…!

りす先輩、私、やりましたよ!!

「ホントに嬉しい! …でもいっぱい話したら、なんだかノドが渇いてきちゃった。

ちょっと水道で水飲んで来るからここで待ってて!」

「うん」

「分かった」

後ろから、アミティとアルルの返事が聞こえた。

私はウキウキで教室のドアを開け――慌ててドアをピシャリと閉じる。

「…どうしたの、りんごちゃん?」

私の挙動不審っぷりをヘンに思ったのだろう。

まぐろ君が心配そうに声をかけてきた。

「な、ななななんでもないよ!!」

私は慌てて首を横に振り、自分に言い聞かせる。

見てない見てない見てない!

海パン一丁のスイカ頭の不審者なんて見てない!!

きっと何かの見間違いだ!

新入部員が二人も入ったせいで気分がハイになり過ぎてそんな幻覚を見たんだ!

きっとそうだ!

そうに違いない!!

…私は深呼吸をし、もう一度恐る恐る教室のドアを少しだけ開けた。

…残念だが見間違いではなかったようだ。

海パン一丁の、スイカ頭の不審者は、確かに廊下でたたずんでいた。

恐らく男なのだろう。

私よりも頭一つ――下手をすると二つ分大きい身長に、がっしりとした筋肉質なボディ。

…何よアレ?

なんであんなのが学校にいるのっ!?

よく見るとスイカ頭にはハロウィンのカボチャのような顔が彫られていた。

…とは言えまさか、学校に仮想パーティーをしにきた来たとも思えないしなぁ。

ふいに、ヤツと目が合った。

ヤツは空洞のような目と口を「にぃっ」と笑みの形に吊り上げ、言った。

「あんどうりんご! そこにいるのは分かっている!! 大人しく出て来い!」

…無論、そう言われて飛び出して行くほど、私は浅はかではない。

っていうか、なんなのアイツ!?

なんで私が、あんな奴から呼び出しを食らわなくちゃなんないわけっ!?

まさか――

「オレはジュエルモンスターが一人、『スイカ男』! 出て来い、あんどうりんご! 貴様さえ大人しく出て来れば、教室にいる残り三人は見逃してやるっ!!」

「なんだって!?」

…どうしよう。

でも、これが逆にまぐろ君達をハメる為の罠だとも限らないし――。

「どうした!? 出てこないならこうだ!!」

ヤツはどこからともなくこん棒のような物を取り出して、廊下の柱をガツンと叩く。

「やめて!!」

「どうしたの、りんごちゃん。…まさか――!」

教室のドアの前で一人叫ぶ私に、まぐろ君が不安そうに声を掛けて来た。

「…まぐろ君は、ここにいて。アルルとアミティをお願い。良い? 絶対にこのドアを開けちゃダメだからね!!」

私は奴を見据えたまま、有無を言わせぬ口調でそう言うと、教室の外へと飛び出した。

その際に、後ろ手で教室のドアをピシャリと閉めた。

幸か不幸か、辺りに人の気配はない。

「やめなさい、ジュエルモンスター!!」

ヤツに向かって私は叫ぶ。

「これ以上学校のエントロピーを増大させる事は、すずらん中学物理部所属、このあんどうりんごが許しません!!」

「ククク……よく臆する事なく出て来たな、あんどうりんご! ここが貴様の墓場だ!!」

…なんとも子供騙しな脅しだ(まぁ、実際私はまだ子供だけど)。

「キミがジュエルモンスターだと聞いて、私は正直安心しているんだよ。スイカ男」

「なにぃっ!?」

「だって、そうでしょ? 人間の不審者が相手なら『逃げる』しかないけど、ジュエルモンスターが相手なら戦って倒せば良いんだもん」

「…ずいぶんとナメた口を…」

「とにかく、あなた達がこれ以上、学校やすずらん商店街のエントロピーを増大させるつもりなら――」

「つもりならっ!?」

挑発的に聞き返すヤツに、私は宣言した。

「『意思』の力で食い止めて見せるわ! 『へんしん』!!」

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