時は遡ること2004年。
コンパイルぷよシリーズの後継として2つのパズルゲームが家庭用ゲームとして発売された。
出典:amazon
一つは「ぷよクエ」等でもお馴染みのアミティ達のデビュー作「ぷよぷよフィーバー」、もう一つは、ゲーム史に埋もれてしまった「ポチッとにゃ〜」である。
両者とも「初心者には連鎖を組むのが難しい」というコンパイルぷよシリーズの課題をクリアするために制作された意欲作であり、片親違いの兄弟であると同時に宿命のライバルでもある、そんな関係だったと思う。
「連鎖を組むのが難しいなら、連鎖のタネを配ればいいじゃない?」
…と、言わんばかりに「フィーバーモード」を実装し、条件を満たせば誰でも大連鎖ができるようになる方向に進化したのが「ぷよぷよフィーバー」。
一方で、
出典:amazon
「連鎖を組むのが難しいなら、連鎖の概念そのものを廃止すればいいじゃない?」
…と、言わんばかりにブロックを複雑な形で長く繋げるというゲーム性に舵をきったのが「ポチッとにゃ〜」である。
2個ずつ連なって落ちてくるブロックは同色がn個そろっても消えず、十字やT字でループしないように繋げ、自分の好きなタイミングで発火するというものである。
確かにこれならぷよぷよで連鎖を組むよりはカンタンにできる。
パズルゲームとしてなかなか面白い水準に仕上がっていた…と思うのだが、残念ながら、本作はほぼ同期のぷよぷよフィーバーに対して全く勝ち目がなかった。
このゲーム、とにかく演出が地味なのである!
2004年にPS2で発売されたゲームにも関わらず、キャラボイスが全くない。(ブロックを消した時の演出としてニャニャとかポチ〜という効果音はついていたが)
牧場物語のようにあえてキャラボイスをつけないゲームならともかく、そうでないなら、キャラにボイスがつかないのはPS2のゲームとしてあり得ないというかかなり寂しい仕様だったと思う。
同年約8ヶ月前に発売された「ぷよフィ」のアミティ達は漫才デモでもぷよ勝負中でも声付きでペラペラ喋りまくる一方で、プリム達は無言。漫才デモとしてのセリフはあるのだが、声が無いので音としては無言である。
あ、プリムは「ポチにゃ」の主人公です。
出典:GAME Watch
一度に沢山ブロックを消す時はカットインが挿入され、攻撃力大と中で各キャラ2種類ずつ用意されているのたが、キャラボイスがないのでいまひとつ盛り上がらない。
また、ストーリーモードで主人公として操作できるのはプリムだけで「フリー対戦」もないため、2人以上でプレイしないと、彼女以外のキャラを使う事ができない。
せっかく、「ぷよ通」や「ぷよSUN」等でアルル達のイラストを手掛けたイラストレーター、壱さんデザインのかわいらしいキャラクター達を、1人プレイではプリムしか使えないのは非常に惜しい点である。(筆者はリヴちゃんがお気に入りだった)。
出典:バンダイナムコエンターテイメント
厳密に言えば、とことんモードではプリム以外のキャラも使用可能なのだが、その場合、ストーリーモードと2人対戦では見られる「ブロックを消した時のキャラカットイン」がとことんモードでは見られないため、あまり意味がない。
恐らくこの仕様は「とことんぷよぷよではキャラカットインが入らない」というコンパイルぷよの仕様をそのまま引き継いだのだと思われるが、変なところでストイックになるなと言いたい。
なお、ぷよぷよフィーバーには、フリー対戦もあったし、とことんぷよぷよも隠しコマンドをいれることで全キャラ使用可能だった。
もう一つ。
「ポチにゃ」はオプションで難易度を調整できるのだが、調整不足なのか、一番カンタンな難易度にしても、低年齢層や落ちゲーが苦手な人がクリアするのは難しいほど敵が強かった。
(一応フォローしておくと、難易度を下げるとその分敵のブロックちぎり回数が増えて攻撃が遅くなるように工夫されてはいたのだが、それでも初心者が楽しく遊ぶには敵がブロックを積み上げて攻撃してくるまでのスピードが速かったし、攻撃力も高かった)
筆者はぷよぷよが好きでそこそこ得意なので、「ポチにゃ」のやや鬼畜な難易度も楽しく感じられた(勿論クリアしたし、隠しキャラにも会った)のだが、苦手な人にとっては本作のプレイは苦行でしかなかったそうな(^_^;)
そんなわけで、ほとんど勝負にならないというか、「ポチにゃに無いけど欲しい」と思う要素のすべてを「ぷよフィ」は完備しており、どう足掻いても「初心者に優しい新時代落ち物パズルゲーム」として成功を納めたのは「ぷよぷよフィーバー」の方だった。
両者とも家庭用ゲーム機版に先駆けてアーケード版が稼動したが、筆者の地元のゲーセンでは「ぷよぷよフィーバー」は稼動していたが、「ポチッとにゃ〜」は稼動していなかった。
PS2版「ポチにゃ」発売後に隣町のゲーセンで本作のアーケード版を見つけたので試しにプレイしてみたところ、PS2版にはなかった別の問題点が浮き彫りになった。
「ポチにゃ」ではブロックの発火はプレイヤーの任意に委ねられている…のだがこれが問題だった。
ブロックを発火したい時、落ちてきたブロック(組みニャン)を十字キーの上を押すことで「針ニャン」に変化させて発火させる…という仕様なのだが、アーケード版だと、レバーを左右に動かした時に左上か右上に操作してしまうことがあり、その度に意図せず組みニャンを針ニャンにしてしまうのだ。
PS2のコントローラーでは十字キーが厳格に区分けされているため、このような事故は起こりにくかったのだが、アナログな操作感のレバーではこれが頻繁に起きてしまい、思うようにブロックを積む事ができず、あっという間にゲームオーバーになってしまった。
「落ちてきた組みブロックを発火ブロックに変える」という、ぷよシリーズにはなかった動作を一つ加えただけでここまで操作の難易度が上がるとは思わなかった。
ゲームのプレイにおいて「シンプルな操作性」が重要であることを思い知らされた。
出典:nintendo
ポチにゃの改善版ゲームである「にょきにょき」は、コンピューター戦の難易度が下がったのは良かったのだが、「演出が地味」という欠点はむしろ悪化しており、キャラボイスがないのはもちろん、「カットイン」も入らなくなったので地味さに磨きがかかってしまった。
「にょきにょき」をプレイして、あまりの地味さに「ポチっとにゃ〜」を再度プレイしたほど(^_^;)
※当時使用していたPSXが壊れてしまったので中古でPS2を買ったらヤニ臭い上に、コントローラーも中にヤニが詰まっているのが反応が鈍すぎてとてもではないが「ポチにゃ」をプレイできる代物ではなかった。レトロゲーム専門店で購入したのだが、中古とはいえ、専門店でそこそこの値段で買ったのにコレはない、と思う(とっておいたPSXのコントローラーで「ポチにゃ」自体は無事にプレイできた)
欠点ばかりを羅列してしまったような気もするが、「ポチッとにゃ〜」は小気味の良い効果音、神BGMの数々、壱さんデザインの可愛らしいキャラクター達と本作は長所も多い。
故に、難易度の調整不足やキャラボイスもフリー対戦もないという作り込みの甘さが悔やまれるゲームだった(もはや開発元のアイキも販売元のバンダイも、本作のヒットはないと諦めていたのか、取説にはキャラクター紹介すらなかったしね…)
…あれからもう20年も経った(怖っ!)。
最も悔やまれるのは、当時ぷよフィが稼働していた地元のゲーセンも、「ポチにゃ」が稼働していた隣町のゲーセンも、現在は閉店してしまって存在しないことだろうか。
余談だが、新旧の「ぷよぷよ開発者」達が集った「X年後の関係者たち」では、落ちゲーの未来として、真っ先に語られたのが、「(コンパイル)ぷよ」の後継ゲームとして開発された「ポチッとにゃ〜」でも「にょきにょき」でもなく「スイカゲーム」だった事に驚いた。
テトリス、ぷよぷよに次ぐ第三世代の落ち物パズルゲームは、誰も意図しないところでひょっこり(!?)誕生したのかもしれない。
(筆者はスイカゲームをプレイした事がないので、今度プレイしてみたいと思う)